ミッション 2030 と 祈りを深めるセミナー ニューズレター No.5 

hanafusafukuin

ミッション 2030 と 祈りを深めるセミナー
ニューズレター No.5  2017年10月31日発行 PDFファイルはこちらから>>

1.はじめに
10 月 8 日(日)午後 4 時からヨセフホールで第 5 回祈りを深めるセミナーが開催され 90 名を超える参加者がありました。
今回は英神父と促進チーム代表から「ミッション 2030」についてその概略と意義についてお話をいただきました。そして「ミッション 2030」を支える 4 本柱の本年度担当「祈りを深めるグループ」と来年度担当「福音を伝えるグループ」から主な取り組みについて報告をしていただきました。

2.英神父と促進チームの報告
2-1:英神父
今年の 7 月と 9 月の活動連絡会で「ミッション 2030」について説明をしました。
その時の話をもとに今日は説明をします。

「ミッション 2030」とはプロジェクトを立ち上げそれを実行して行くといったものではありません。これは今から 2030 年に向けて私たちが日々意識を新たにして共に歩んで行くためのビジョンです。

これは目標でもあり、目指していく方向性でもあります。またある意味では私たちの意識をふりかえるための物差しです。つまり日々の生き方を「ミッション 2030」を支える 4 本の柱、
すなわち 1)祈りを深める、2)福音を伝える、3)共同体を生きる、4)新しいきょうどうの視点からふりかえることです。
2030 年といってもあと 10 年あまり、すぐそこまで来ています。

活動連絡会の各グループは 9 月までにそれぞれのグループの祈りを作るよう主任司祭から要請があり、すでに出来上がった祈りを、活動を始める前にメンバーで共に唱えているところもあります。さらに来年 3 月末までにはそれぞれの活動をふりかえりレポートを出すようになっています。

みなさんの中には 2030 年の頃には教会に来られなくなっているかもしれないと思っている方もいるかもしれません。しかし、現在、土曜・日曜学校へ来ている子供たちが大人になって通う教会がどうなっているのか考えてみることは必要なのではないでしょうか。

現在は主任司祭と 2 人の助任司祭、3 人の協力司祭(1 人の修道士)の司祭 7 人体制ですが、2030 年の頃はっきりしているのは主任司祭と 2 人の助任司祭の 3 人体制になることです。もちろん私も 70 歳を超えこの教会にはいないと思います。世代交代は確実なのです。私たちは今から後についてくる人たちのために準備をしていかなければなりません。これが「ミッション 2030」のひとつ意義です。

2-2:「ミッション 2030」促進チーム
「ミッション 2030」促進チーム(M.P.T.)についてスライドを使ってそのイメージと 4 本柱の各グループの進捗状況について報告が行われました。

2015 年 4 月から 2016 年 7 月まで教会生活見直しワークショップを経て 2016 年 9 月の宣教司牧評議会で「ミッション2030」とそれを支える 4 本柱が決まりました。同時に「ミッション 2030」促進チーム(M.P.T.)の設立も承認されました。これによって「ミッション 2030」と 4 本柱および促進チームは正式に当教会の宣教司牧評議会のもとに置かれました。

「ミッション 2030」促進チームは「ミッション 2030」の意識化を 4 本の柱を通して推進していくことがその主な役目です。硬い規則や機械的な組織として行動していくのではなく、教会の活動グループや一人ひとりの信徒のみなさんが「ミッション 2030」の意識を深めて行くことができるよう、風(プネウマ)のようなイメージで応援していきたいと思っています。

9 月の宣教司牧評議会で承認されたこれからの推進活動は次の通りです:
・第 1 の柱「祈りを深める」グループ(AP1):
1)祈りのとりなし隊募集
2)秋のリビング・ロザリーでの教会広場(芝生)使用
3)上智大学川村信三神父による 11 月 23 日教会黙想会「キリシタン時代に学ぶ教会生活のありかた」

・第 2 の柱「福音を伝える」グループ(AP2):
1)新たな教会案内(コンシェルジュ)体制設置ニーズのための調査(10/14~10/16 と 11/4~11/6)
2)東京大司教区の信徒による教会入門講座へ信徒派遣の検討(司教区からの要請を待って)
3)現在の防災委員会を第 2 の柱から独立した新しい防災委員会として設立

・第 3 の柱「共同体を生きる」グループ(AP3):
1)洗礼を受けた人の後追い調査の結果の中間報告
2)長寿の会のありかたの検討
3)弱い立場にある人への配慮-ステラキッズカフェの立ち上げ

・第 4 の柱「新しいきょうどう」
1)今後 3 年半の間に現在のスタッフ 3 名から 7 名に増員する
2)キリシタン時代から学ぶことの一環として「祈りを深めるグループ」と教会黙想会を共同で行う
3)イエズス会 4 教会(山口教会、広島祇園教会、神戸六甲教会、イグナチオ教会)の連携を強化。共通のロゴマークの製作、インターネットの活用(ネットによる講座、会議の共有)

これからも教会ホームページ、教会報マジス、セミナーやニューズレターを通じて「ミッション 2030」の進捗状況を報告して参ります。

2-3:「祈りを深める」グループと「福音を伝える」グループからの報告
2-3-1:「祈りを深める」グループ
・新しい 2 つの取り組みの紹介:
1)「祈りのとりなし隊」への呼びかけ
カトリック教会には「とりなしの祈り」という伝統があります。祈りというと普通は、自分の願いや家族のためなどの祈りを思い浮かべますが、今回呼びかけている祈りは他者のために祈ることです。私たちの教会のため、そして「ミッション 2030」のための祈りを決まった時間に捧げます。

祈りは教会の鐘の鳴る時間に合わせて朝 7 時、昼 12 時そして夕方 6 時のいずれかの時に「教会のため、ミッション 2030 のために」という意向で、「主の祈り」、「アヴェ・マリアの祈り」と「栄唱」を 1 回唱えます。どなたでも参加できます。そして場所は問いません。登録も必要ありません。ぜひ「祈りのとりなし隊」のメンバーになってください。

2)11 月 23 日教会黙想会
今年の教会黙想会は上智大学文学部史学科教授川村信三師に指導していただきます。川村神父はイエズス会史、ヨーロッパ 16 世紀史そして日本キリシタン史を専門とされており、2014 年の NHK 大河ドラマ「軍師官兵衛」のキリスト教考証を担当されました。
今回の教会黙想会では「キリシタン時代に学ぶ教会生活のありかた」というテーマで、午前の部は「高山右近時代の教会のありかた」、午後は「潜伏キリシタン時代の教会のありかた」について講話をいただきます。

高山右近の時代はキリシタン迫害前の時代です。この時右近の領地では信徒数は 2 万人、教会数は 20 を数えていました。しかし司祭は常駐せず巡回していたといわれています。信徒を中心とした教会のありかた、右近のリーダーシップと教会の運営がどのように行われていたかをお話していただきます。

潜伏キリシタン時代は迫害のあとの時代です。250 年もの司祭不在の中、どのようにして信仰を守り教会を維持してきたのかをご教示いただきます。

これら二つの事例を基に現代に生きる私たちが、それぞれの信仰生活と「ミッション 2030」を実現して行くためのヒントを学んで行きたいと考えています。

黙想会のあとは川村神父と英神父による共同司式のミサを予定しています。ぜひご参加下さい。

2-3-2:「福音を伝える」グループ
教会案内(コンシェルジュ)体制構築のための調査を 10 月 14 日から 16 日と 11 月 4日から 6 日まで 2 回に分けて午前 8 時から午後 6 時まで行います。教会入口から主聖堂前、教会事務所のあたりを調査員 2 人で巡回しながら教会に来られた方々がどんな
ニーズを持っておられるのか聞き取り調査のかたちで行います。

調査は M.P.T.のメンバー、傾聴グループ、日曜サロン、入門講座のヘルパーの方々が担当し、調査員数は延 60 名になります。調査にあたってはこちらから積極的に質問するのではなく、教会を訪れた方が質問をしようとするタイミングを待って行います。

この調査をする前に、この教会を新たに訪れる方たちにはどのような質問があるのか、小さな予備的調査を教会事務所の職員の方々と教会案内所女子パウロ会のシスターにヒアリングをしました。その結果、新しく教会に来る人たちにはいろいろな疑問や問題を抱えておられることが分かりました。

しかしそれ以上に感激したのは教会事務職員の方々の覚悟でした。厳しい苦情やミサの時間などネットで調べればすぐわかることまでたくさんの問合せが事務室へ来るのですが、それは自分たちの仕事であるからその負担を軽減するためのコンシェルジュ体制は不要ですときっぱりと言われ、教会に初めて信仰を求めて来られる人たちや問題を抱えて来られる人たちによい最初の導きができるようなコンシェルジュ体制を築いてくださいと励まされたからです。

また教会案内所では「この本ありますか」とか、「誰々神父の本はありますか」などの質問やミサの時間の問合せなどに答えたり、ロザリオやメダイなどについて説明したりするぐらいかと思っていたところ、実際には大きく違っていたことを発見しました。

シスターとのヒアリングで、いかにたくさんの心の悩みや信仰生活上の問題を抱えた人たちが案内所を訪れ、シスターたちにアドバイスなどを求めておられているかよく分かりました。シスターたちが福音を伝えるために教会案内所での働きを通してどれほど貢献されてきているのかはっきりしました。

さらにシスターからは、抱えている問題がデリケートなのでこちらから積極的に話しかけるのではなく、相手が話しかけたいと思うタイミングを見極めて声をかけることが大切とのアドバイスもいただきました。

これからコンシェルジュ体制の構築に向けた調査をして行きますが、教会へはいろいろな悩みをもたれた方や障害をもたれた方も訪れますので、調査結果を踏まえてコンシェルジュのありかたを慎重に検討をして行くことが重要になってきます。またコンシェルジュというのは仮の名前ですから今回の調査を踏まえさらにどういう名前が適切なのかも検討して行く予定です。

3.英神父の講話
3-1:祈りと活動について
祈りと活動をどのようにつなげて行くかは難しい課題です。これは霊性の問題です。
私たちがどのように祈り、どのように祈りを活動の中に生かし生活していくのか絶えず問われている切実な問題です。

3-2:祈りと活動の 3 つのタイプ

大きく分けると霊性(祈りと活動のありかた)はつぎの 3 つのタイプに分けられます:
1)ベネディクト会の観想修道会的霊性:「祈り、働け」(Ora et Labora)
観想修道会的霊性は市街地から離れたところに共同で定住し 1 日に 5 回共同で神を賛美する。昼間は農業などに従事し自給自足の修道生活を送る。シンプルな生活の中に一定の安定した生活のリズムがある。

2)フランシスコ会やドミニコ会の托鉢説教修道会的霊性:「観想の実りを他者に伝えよ」(Contemplata aliis trader):
托鉢説教修道会的霊性は 11~12 世紀の頃に生まれ、聖トマス・アキナスの言葉にあるように祈りの実りを他者に伝えていく霊性。定住せず、他者に祈りの実りを伝え有機的につながり、喜捨によって生活する。昼間は外に出て行くダイナミックな霊性をもち、夜は修道院へもどり、共同生活を営む。

3)イエズス会の使徒的修道会の霊性:
「活動における観想的態度」(Simulin actione contemplativus):
イエズス会のモットーである「Contemplatives in Action」(活動における観想)は祈りと活動を区別せず、祈りと活動を統合する霊性であり、近代・現代に適応した霊性とみることもできる。すべてのうちに神をみる流動的でダイナミックな霊性である。1)と 2)と違い、共に祈ることは少なく、聖務日課は共同でなく 1 人で唱える。

3-3:霊性とライフスタイル
個人的には 3)だけでは行き過ぎになることがあると思います。中年を過ぎてくると 1)も 2)も大切であると思うようになってきました。しかし忙しい人、都会で働く人にはこの 3)の霊性が適しているかもしれません。

1)は大家族で田舎に暮らし農業に従事して自給自足の生活をする伝統的な家族のイメージでしょう。イエズス会を引退した司祭が祈りに専念する生活を送るライフスタイルと同じ霊性です。「ミッション 2030」的に言えば「祈りを深める」と「共同体を生きる」グループを統合したようなライフスタイルといってもよいかも知れません。

2)は郊外に住むサラリーマンにも似ています。昼間外に働きに出て夜は家に戻って来るライフスタイルです。

3)は都会に生活する核家族のイメージでしょうか。昼間家族のメンバーはそれぞれ学校や職場に出かけて行き、家に戻っても団らんのあとはそれぞれ自分の部屋に戻っていきますので。

3-4:霊操的黙想の実践
祈りと活動を日々の生活の中で統合していくためには、これまで学んできた聖イグナチオの霊操の日々の黙想の流れを実践することで実現できると思います。

霊操 46 番は黙想を始める前の準備について「自分のあらゆる意向と行為と働きが、ひたすら主なる神への奉仕と賛美だけに向けられるよう、主の助けを願う」と教えます。この意味は黙想を始める前に自分の意向を正しく整え、純粋なものにすることで
す。

そしてつぎに霊操 47 番第一の準備で「想像しながら現場を見ているように設定すること。黙想する内容をまとめること」を指示しています。例えばご降誕の場を具体的にイメージすることです。

第二の準備は霊操 48 番「切に望んでいるものを主なる神に願う」(ido quod volo)
英語の(I Wish)のことです。明確な目的や目標を持つことです。例えば「ミッション 2030」のようなビジョンを持ちその実現を望むことです。そして霊操の 50~52 番を参考に、黙想する要点を実際に黙想・観想することです。これは極めてイエズス会的な祈りへのアプローチです。

黙想が終わったあと、霊操 77 番付則第 5 は「霊操を終えた後、15 分間腰をかけるなり、歩くなりして、観想か黙想がどのようにいったかを反省する。よくいかなかった場合、その原因を調べ、調べた上で、今後の行為をよくしていくため心を改める。よくいった場合には、主なる神に感謝し、次の霊操にも同じ方法を使う」ことを勧めています。この時この反省をノートに書き残して置くことも大切です。

このイエズス会的祈りと活動を統合する基本的枠組みはつぎのようにまとめること
ができます:
① 準備の祈り:神への賛美#46 と、具体的望み#48,
② 働き・活動(黙想・観想)
➂ 回想・ふりかえり(意識の究明 77)

これが霊操のダイナミズムです。朝祈り、活動に出かけ、夜祈ることです。朝今日 1日をどのように過ごすか準備し、外に出かけ、帰りに電車の中などでふりかえりを行うか、家に帰ってからふりかえりをするリズムを体得し、日々の生活を充実させていくことです。

一人で、家族で、あるいは友人と共に、どのような形であっても祈りを続けることが大切です。自分のいるところから祈りと活動を統合し準備・働き・回想のリズムを体得、習慣づけていくことを勧めます。

4.次回セミナー:
特別編として講師はケルクマン神父。11 月 12 日(日)16 時からマリア聖堂で行われ
ます。テーマは聖週間に因んで『みことばに学ぶ「正しい価値観と心の自由」』です。
どうぞご参加ください。

文責:英神父とミッション 2030 促進チーム

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