マタイ福音書5章13-16節「地の塩・世の光」2008年6月、8日間の黙想会、鎌倉にて
5:13 「あなたがたは地の塩である。だが、塩に塩気がなくなれば、その塩は何によって塩味が付けられよう。もはや、何の役にも立たず、外に投げ捨てられ、人々に踏みつけられるだけである。
5:14 あなたがたは世の光である。山の上にある町は、隠れることができない。
5:15 また、ともし火をともして升の下に置く者はいない。燭台の上に置く。そうすれば、家の中のものすべてを照らすのである。
5:16 そのように、あなたがたの光を人々の前に輝かしなさい。人々が、あなたがたの立派な行いを見て、あなたがたの天の父をあがめるようになるためである。」

最近、塩はあまり人気がないようで、食べ物でもなんでも、減塩とか、味付けもあまい、といった時代ですし、世の光、といっても最近のように夜でもぴかぴかとそこらじゅう昼みたいに明るい時代ですから、光のありがたみというものがあまりわからなくなってきています。また逆に、あまりにもあたりがぴかぴかと明るいから、かえって社会が、日本全体が闇の中にあるような印象もうけます。このような中で私たちは、「地の塩」として生きるように呼ばれているあるいは「世の光」として生きるように呼ばれているのだと思います。それは場合によっては、時代おくれになった「悪者みたいな」塩のような生き方をしなければならないのかもしれません。ひと昔前の話ですが、カール・ラーナというイエズス会の神父、20世紀の後半の有名な第二バチカン公会議の後の神学をほとんど決めたような学者がいて、まあ、日本のイエズス会会員にもわりとカール・ラーナーが好きな人が多いのですが、皆さんも経験されたことでしょうが、第二バチカン公会議のあと、イエズス会だけでなく多くの修道者が修道会をやめたり司祭職を捨てたり、ということがありました。そういう時代の話ですね、そういう時にカール・ラーナーが地元のラジオ局かなにかに出た、そのときの話ですけど、テーマが「まだ、イエズス会に希望があるのか」というもので、今から見たらまだかなり希望があったと思うんですけど、そのインタビューにラーナーがこう答えたといわれているんです。「イエズス会の中にまだ世界的に影響を与える神学者がいるから希望があるのかといわれるのならば、私はそうは思わない。今だにイエズス会が大学教育を通してエリートに影響を与えているから希望があるのか、と言われるかもしれないが、私はそうだとは思わない。教会の中に有名な説教家がいて影響を与えるから希望があるかというと、私はそうだとは思わない。」と答えたそうです。ではどういうところに希望があるかというと、彼はドイツの神学校で学んだのですが、同級生の中でミッションで第三世界に出かける仲間が何人もいたわけです。そのうちの一人はインドに派遣されたのですが、今とかなり状況も違いますから、医療なんかも十分でない地域で、彼の仕事の大半はお医者さんのような医療関係の仕事を朝から晩までしていたわけです。もう一人の同級生はアフリカに派遣されて、そこは道もないようなところでしたから、彼の仕事は道路を村人と整備することで、一日中、土木作業をやっている。この二人の神父さんは、別に有名な人でもないし、マスコミに登場したり社会に評価されるわけではないのですが、第三世界の片隅で毎日自分を捨てて奉仕の仕事に打ち込んでいる。ラーナーは「この二人の同級生のことを思い出すと、まだイエズス会には希望があると思う」と言うのです。たぶん、70年代とか80年代のことだと思います。今からいったら一昔前の話ですけど、私たちは、今の日本社会で、あるいは修道生活で、あるいは教会の中で、どこに希望をみいだしているか.私たちは明らかに謙遜になることに呼ばれていると思います。教会でも、日本社会の中でもはなばなしく宣教して影響力を与えて洗礼に導くという時代ではないわけです。今は私たちは、小さなもの、謙遜な者になるようにと呼ばれている時期だと思います。その中で、私たちは「地の塩、世の光」になるように呼ばれていることはまちがいないと思います。どういうところから見て「地の塩、世の光」なのか、世の中には評価されないかもしれませんが、時代遅れの塩辛い味をわたしたちが 生活のどこで効かせていくのか、物質的にはぴかぴか輝いているような日本の社会の裏にある深い闇が社会や心の中に広がっている、その中でわたしたちがともしびをともしていけるかどうか、ひとりひとりの生活の中で、ともしびをともしていけるかどうか。本当に真っ暗な中で一本のろうそくが輝いているだけで、それは人々にとって、恵みというか、しるしとなって見えるんではないかと思います。黙想会ももうすぐ終わりますが、あらためて、私たちが社会の中で「地の塩」として、「世の光」、小さなともしびとして生きていけますように。

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